前期に引き続き会長を担当させていただくことになりました。
これからも我が国における耳鼻咽喉科医療の向上に向けて努力してまいりますので、一層のご支援、ご鞭撻をお願いします。

さて、我が国は超高齢社会を迎え、2040年に高齢化率が約35%に達する一方で、生産年齢人口(現役世代)が大幅に減少し、高齢者1人を支える現役世代の人数は2020年の2.1人から1.6人にまで減少する見込みです。このため医療・介護・年金の給付費が増大し、制度の持続可能性が最大の課題となります。また、地方の人口減少による過疎化とインフラの老朽化により自治体運営や地域社会の維持が困難になるケースが増加し、持続可能な地域づくりが求められています。

医療においても厚生労働省のデータでは、一部の大都市を除き、すでに全国で外来患者数が減少に転じている一方で、在宅医療のニーズは年々増加していく見込みです。耳鼻咽喉科に関しては、新型コロナウイルス感染症の流行以降、感染予防の意識の高まりや、ワクチン接種の普及から、その他の感染症が減少しており、現在行われている手術も、疾病構造の変化や人口の減少、年齢構成の変化に伴って将来的に減少していくと見積もられています。

一般社団法人日本臨床耳鼻咽喉科医会
会長 川嵜 良明

このように耳鼻咽喉科を取り巻く環境は急速に変化しています。我々はこの変化に積極的に取り組み、これを好機として新しい耳鼻咽喉科診療の姿を会員の先生方とともに考え、作り上げていきたいと思います。

すでに、我々は3年前に日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会と共同で「耳鼻咽喉科頭頸部外科医療の未来プラン」を策定し、この内容を厚生労働大臣にも要望書として提出し、理解と支援をお願いしています。

「耳鼻咽喉科頭頸部外科医療の未来プラン」
1.耳鼻咽喉科頭頸部外科の専門性をより発揮できる診療体制の構築
2.花粉症対策の推進
3.耳鼻咽喉科関連フレイル対策の推進
4.新興感染症対策の推進
5.在宅医療の推進と診療報酬の再評価
6.周産期・小児医療への積極的な関与
7.ワクチン接種の推進
8.学校医の柔軟な運用
9.耳鼻咽喉科救急医療の充実と再構築
10.全世代を通しての難聴対策「難聴対策基本法」の制定
11.働き方改革への対応
12.かかりつけ医としての専門性の確立
13.医療DXの推進
14.耳鼻咽喉科専攻医のリクルート
15.耳鼻咽喉科医の教育と育成

特に超高齢社会における難聴対策は重要な課題であり、学会と協働してマスコミ等を通じた大規模なキャンペーンを展開しています。難聴はコミュニケーションを阻害し、日常生活の質を低下させるだけでなく、認知症との関連や転倒などのリスクを高めるなど、中高年の皆さんにとってその対策は重要な課題ではあります。また、ヘッドホン・イヤホン難聴は大きな音量で音楽などを聞き続けることにより不可逆的な難聴が徐々に進行します。加齢による難聴もヘッドホン・イヤホン難聴も徐々に進行するために本人が自覚しにくいという側面があり、聴覚を専門とする我々耳鼻咽喉科医が積極的に介入していく必要があります。
我々は耳鼻咽喉科医の職能団体として国民の健康に貢献できるよう、さらなる努力を続けていきます。

(令和8年6月)