この度、4年間にわたって会長を務められた福與和正先生の後任として会長に選出されました川嵜良明です。その責任の重さに身が引き締まる思いです。

さて、我々耳鼻咽喉科の診療に大きな影響を及ぼした新型コロナウイルス感染症は、ようやく収束の方向となり致死率も低下したことから、昨年5月8日に指定感染症2類相当から5類に引き下げられました。しかしその後も感染者数は増加と減少を繰り返し、一定程度の流行が継続する状況となっています。

新型コロナウイルス感染症の流行は受診抑制による患者数の減少のみならず、感染予防の意識の高まりからその他の感染症の減少につながり、また以前から見られていた慢性中耳炎や慢性副鼻腔炎など従来型の慢性炎症の減少も顕著になってきています。

我々耳鼻咽喉科医は現在、この状況の変化に対応することを迫られています。昨年、我々は日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会と共同で「耳鼻咽喉科頭頸部外科医療の未来プラン」を策定し、この内容を厚生労働大臣にも要望書として提出し、理解と支援をお願いしています。内容は本ホームページの「お知らせ」に掲載していますが、以下のような項目を取り上げています。

一般社団法人日本臨床耳鼻咽喉科医会
会長 川嵜 良明

1.耳鼻咽喉科頭頸部外科の専門性をより発揮できる診療体制の構築
2.花粉症対策の推進
3.耳鼻咽喉科関連フレイル対策の推進
4.新興感染症対策の推進
5.在宅医療の推進と診療報酬の再評価
6.周産期・小児医療への積極的な関与
7.ワクチン接種の推進
8.学校医の柔軟な運用
9.耳鼻咽喉科救急医療の充実と再構築
10.全世代を通しての難聴対策「難聴対策基本法」の制定
11.働き方改革への対応
12.かかりつけ医としての専門性の確立
13.医療DXの推進
14.耳鼻咽喉科専攻医のリクルート
15.耳鼻咽喉科医の教育と育成

このように多岐にわたる課題に対して我々は過去の発想にとらわれず、積極的に取り組んでいきます。

特に超高齢社会における難聴対策は重要な課題であり、今年7月から学会と協働して「聞き取りづらさと感じたら耳鼻咽喉科を受診しましょう」を合言葉にマスコミ等を通じた大規模なキャンペーンを展開します。難聴はコミュニケーションを阻害し、日常生活の質を低下させるだけでなく、認知症との関連や転倒などのリスクを高めるなど、中高年の皆さんにとってその対策は重要な課題ではありますが、本人が自覚しにくいという側面もあり、聴覚を専門とする我々耳鼻咽喉科医が積極的に介入していく必要があります。

本会は設立後、まだ4年と歴史は短いですが、耳鼻咽喉科医の職能団体として国民の健康に貢献できるよう、さらなる努力を続けていきます。

(令和6年6月)